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半自叙伝

古井由吉 月報をまとめただけ、ということなのだが、それなりに面白かった。 まず、これほどの文章が書ける人でも、苦しんでいるという事実に改めて感動した。それから、ちょっとした作品案内になっていて、なんとなく懐かしい思いがした(一作を選ぶとした…

むらぎも

中野重治 ごく自然に書き流しているようでいて、そうではない。意識の流れに沿って(いるのだろうか?)、折り重なった時間が丹念に書き込まれている。かなり計算して書かれているはずなのである。 けれども、うまく物語に入っていくことができなかった。 あ…

眞田三勇士忍術名人 猿飛佐助

雪花山人 著 復刻版。原本は、大正3年に、立川文明堂から出版された。二十五銭、というのは、今のお金でいくらくらいになるのだろうか。 とにかく調子がいい。 山高しと雖も尊からず、木あrを以て尊しとなす、人間も其の通り、幾等豪勇でも智恵がなくって…

吉本隆明全集

3月13日発行、と「特別サイト」にあったので、本屋さんに寄ったが、無駄足だった。 家に帰って、アマゾンサイトを見ると、15日発売、となっている。アマゾンでは、発売されていないうちから、「全集」カテゴリーでベストセラーになっていた。 随分前に出た『…

Hermann Heidegger

Die Zeit 11号に、ハイデガーの息子をインタヴューした記事が掲載されている。 間もなく出版が予定されている『黒いノート』は、マルティンのナチとの関連がさらに明らかになるのではないかと期待されているが、編集段階で、ヘルマンの手がかなり入っている…

八月一日(日)晴

頭の中を翻訳する (承前) 先崎学 読んでから時間がたってしまったので、記憶を頼りに、話を再現してみる。 先崎八段は、将棋に、感性と感性のぶつかり合いを見る。多分、観戦記者?として、そこに言語化できる領域を見つけた、ということなのだろう。とこ…

頭の中を翻訳する

先崎学 前項の続き。 音楽/将棋/数学 は、それぞれ固有の記号体系をもっているが、記号体系そのものの役割が違う。 数学は、記号によって書かれたものが、まさに数学の実体である。図とか、グラフとかは、便宜的な下絵にすぎない。最終的に、数式になるか…

将棋 エッセイコレクション

後藤元気 編 将棋は、音楽や数学と同じように、独自のルール(体系、構造)と、記号(棋譜、楽譜)をもつ。そして、この三領域は、コトバで表現するのが難しい。 随分前に、川端康成の『名人』を読んでみたが、どうもよく分からなかった。 問題は、私自身に…

Über das Grauen I

Walter Benjamin の断章。 深い沈潜(瞑想、集中)からの覚醒時に、恐ろしい幻影が生じることがある。女性(母親)の像でることが多いのだ、と。 深く沈潜していていながら、精神がもっとも活発に活動しているのは、祈りのとき。しかし、神や自己に完全に沈…

Jean Paul

Max Kommerell Kurt Wölfel の Schoppe という講演記録 JbJPG 2000/01 を読んで、改めて、"Siebenkäs und Leibgeber" を読み直してみた。Kommerell にしても、Wölfel にしても、ジャン・パウルのテクストのおもしろさを知り尽くしていると思う。読むたびに、…

Siebenkäs. Ende der Vorrede und des ersten Bändchen

語り手ジャン・パウルは、パウリーネに、『ジーベンケース』第一巻、つまり、貧乏弁護士の結婚や、ドッペルゲンガーの友情の物語を読んでやっていた。しかし、娘の父親は、寝たふりをして、二人の様子を見張っていたのだった。家を追い出されたジャン・パウ…

詩学講義 無限のエコー

耳なし芳一から、立石寺、赤城山へ、細い糸でつながっているような、いないような。 いや、多分、そういう読み方がダメなのだろう。吉増剛造という人は、一瞬にかけるパフォーマーなのだ。なにかが見えてくる爆発的な瞬間が眼目であってみれば、時間的な連な…

Schatten. Ihre Darstellung in der abendländischen Kunst

Ernst H. Gombrich 1995年に出たエセ-のドイツ語訳。陰影による立体表現法 (Modellierung) は、連綿と続く西洋絵画の伝統的手法であり、古代アテネの壺の絵にもすでに、確認されるという。だが、モノが投げかける「影」(Schlagschatten) は、かならずしもい…

Peter Urban

昨年12月に逝去。11日付けの Tagesspiegel 紙に、この翻訳家の仕事ぶりが紹介されている (Perlentaucher)。 家は、大きな農家で、あちこちに書き物机がおいてある。ゴンチャロフ机、チェーホフ机、といった風に、机ごとに、関連するメモや草稿が山積みにされ…

二人の主人を一度に持つと

ゴルドーニ(田之倉稔 訳) 訳者が示した楕円の焦点に入るべきは、ベアトリーチェ/フェデリーゴ、トゥルッファルディーノ/パスクワーレ。ドラマを支えているのは、二対の不在のドッペルゲンガーである。

詩学講義 無限のエコー

吉増剛造 講義の初めの方で、中也の「歩行」(散歩ではないのか?)が話題になるのだが、大岡昇平の回想を引用しながら、「古風な漂白の道を」という部分でつかえてしまったのか、「これはマズイ」、「だめだ」とわざわざ括弧書きされている。 図書館から借…

ツワネ原則

「国家安全保障と情報への権利に関する国際原則」(日本弁護士連合会 訳) 2013年6月12日に発表されたという。やはり情報管理は、世界的に見ても、もっともアクチュアルな問題なのだ。しかし、門外漢が言うのも気が引けるが、高橋某が、新聞で絶賛するほど、…

<誠実>と<ほんもの>

近代自我の確立と崩壊- ライオネル・トリリング著 原著は、1971年。野島秀勝訳が、76年に筑摩書房から出ている。数年前に読んで、コピーまでとったはずだが、あの時なにを読んでいたのか。今、再読して、ようやく何が問題なのかが判ってきた。 "sincerity" …

鏡花紀行文集

岩波文庫 達筆というのは、こういう文章を言うのか。自由自在な言葉遣いに、独特の雰囲気が醸し出される。 円山川の面は今、ここに、その、のんどりと和み軟らいだ唇を寄せて、蘆摺れに汀が低い。彳めば、暖かく水に抱かれた心地がして、藻も、水草もとろと…

ガウスの『数学日記』

高瀬正仁(訳、解説) 日本評論社 唯一理解できたのは、日記の空白期間。1801年に小惑星ケレスが発見され、ガウスは軌道計算に大いに寄与した。「数学」日記には、1801年10月から1805年8月30日まで、まったく記事がない。 記号の連なりを眺めれば、意味不明…

Jean Paul und die Bilder

Bildkünstlerische Auseinandersetzungen mit seinem Werk: 1783-2013 Hg.v. Monika Schmitz-Emans und Wolfram Benda, Würzburg 2013 会誌の代わりというわけではないだろうが、ジャン・パウル協会の年次総会の案内とともに送られてきた。論文は全然読んで…

五勺の酒

中野重治 語り手の校長先生は、常識的、良心的な民主主義者を代表しているということができるのであろうか。ちょっと読むと、起承転結のないグチを書いているだけのように見えるが、実際には、用意周到に構成されたフィクションである。多分。 歯が痛い。

NHK

『世界』1月号 メディア批評 NHK経営委員会が政府筋に押さえ込まれている、と。 新聞を止めるよりも、受信料を節約した方がいいかもしれない。

世界1月号

特集は、やはり特定秘密保護法。『秘密と監視の国家はいらない』というのだが、スピードで安倍内閣に負けている。 特集の冒頭、むのたけじという人の談話が掲載されている。戦時中、朝日新聞社には、月に2500通もの投書があったという。

Histroy and its Images. Art and the Interpretation of the Past

Francis Haskell 1993 16世紀古銭学者によるイメージの発見に始まった図像への関心は、18世紀になって歴史的文化的な図像解釈へ展開する、という話らしい。 1000円也。古本屋さんで購入。 もう一冊、W. Hogarth の本がやはり千円で出ていたのだが、一歩遅れ…

出会い

シェーンベルク/カンディンスキー 土肥美夫訳 ドイツ語原書は、Jelena Hahl-Koch という人が編集している。 結局、画家と音楽家は、どの部分で出会っていたのか。カンデンスキーの第一信で、「理解できなかった」と書かれているポスターの一節も、本書には…

ハンナ・アーレント

マルガレーテ・フォン・トロッタ監督 2012 溜まった仕事を放り出して、映画を見に行った。 アイヒマン裁判をアレントを軸にして描いている。 「悪の陳腐さ」という見方をとるならば、ナチス官僚もユダヤ人指導者も、そのような特性をもった「人間」にすぎな…

Fantasiestücke in Callot's Manier von E. T. A. Hoffmann

Jean Paul, hg. v. Kaltërina Latifi, Ffm./Basel (Stroemfeld) 2013 ジャン・パウルがホフマンの『カロ風幻想作品集』に寄せた序文が本になった。 贅沢な一冊である。ベーレント版で、わずか6ページのテクストに、草稿と清書原稿のファクシミリ、転写、註、…

フロイト

図書館で『世界』を探していたら、『思想』バックナンバーに「フロイト特集」を見つけた。どうして今まで気づかなかったのか。 フロイトは、今や心理学というよりは、文学的テーマなのだ。中村論文、小田部論文を読む。

『世界』

今月の特集は、国家安全保障基本法。特定秘密保護法案についての論考もある。 今年のトピックは、イスラム(シリア、エジプト、トルコ)、核(イラン、日本)にならんで、情報(スノーデン、サイバー攻撃、言論統制)だろう。

Siebenkäs

歴史的批判版は、Kurt Schreinert が編集している。Einleitung冒頭で、「ドイツ」を繰り返しているが、出版は、1928年。ナチ絡みではなさそうである。 レネッテの性格描写を評価するのは、19世紀的レアリズムをモデルにしてのことだろう。首尾一貫したライ…

草迷宮

泉鏡花 漢字の多い文章であるが、よくよく見てみれば、文語と口語が混在している。語り手から語り手へ物語は語り継がれる。修行中の法師は、一人真実を知ることとなるという意味では主役であるが、もっぱら聞き役であり、迷宮世界ではあくまでよそ者なのだ。…

ヘルダーリン『アンチゴネ』注解

バイスナー版全集で、わずか8ページにも満たない断片であるが、凄い密度、いや、断片的であれば、おなさらということか。 Was wagtest du, ein solch Gesez zu brechen? なぜ、おまえはそれと知って、犯すべからざる法を犯したのか? この問答は、「時代と…

ジパング

時里二郎 1995年刊。HMV経由で、定価で買うことができた。 一時期、この人の作品をまとめて読んだことがあった。次の詩集を心待ちにしているうちに、なぜか急に熱が冷めてしまった。ある批評家が、次の詩集は凄い、とか書いているのを読んで、もうやめようと…

文化批判と社会

アドルノ『プリズメン』第一章(ちくま学芸文庫) 『プリズメン』が出たのは、1951年。論文は、49年に執筆された。 「アウシュヴィッツ以後、詩を書くとは野蛮である」が気になって、読み直してみた。 文化の中から生まれた文化批判は、ナチにも使われれば、…

昭和維新試論

下村湖人『次郎物語』の最後に、地方の青年を集めて、民主主義的な共同生活を実践する塾が出てくる。ユートピアにしては、妙な熱気が漂っていると思ったものだが、それは、主人公の性格によるものではないらしい。 橋川文三によれば、日露戦争以降、若手官僚…

Sophokles: Antigone

übersetzt v. Hölderlin, bearbeitet v. Martin Walser, it. 1989 昨日、アンティゴネ受容についての講演を聴いて、家にあったインゼル版を引っ張り出した。ヴァルザーが前書きを書いている。 善か悪かという倫理的判断は、清いか、穢れているかという美的判…

20世紀SF③

中村融 山岸真 編 河出文庫 1960年代のSF14編が収められている。今朝は、最初の作品、ロジャー・ゼラズニー『復讐の女神』を読んでみた。1965年に発表された。 3人の男が部屋にこもって、宇宙のテロリストを追跡する話。解説にはユングのことなどにも言及が…

昭和維新試論

橋川文三 講談社学術文庫 1921年(大正10年)の安田善治郎暗殺から、渥美勝の桃太郎主義へ。心情に分け入って、昭和初期の右翼運動を描いている。なんとなく判ったようなつもりになってしまうところが、我ながらアマイ。

1九と金

昨日の朝日新聞朝刊。と金をそっぽに動かす驚愕の一手。

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クリスマス・イブに贈る三大交響曲 運命 未完成 新世界より 私の2013年は、このうちのどれか、あるいは、どれも、だろう。

聴こえない音楽

《アベッグ変奏曲》のフィナーレ(初版の改訂版)における「ABEGG」の主題は、鳴り響いて提示されるのではなく、この音が一音ずつ消えていくことによって表現される。・・・ シューマンの作品では、音響的に鳴り響く効果と楽譜に記されていることの不一致を随所…

Was gesagt werden muss

Günter Grass 2012年4月10日付けのSZサイトを再読。 ドイツのノーベル賞作家がイスラエルを非難した、ということで、プレスに発表されるや、大スキャンダルになった(wiki.de は、この詩のために、独立した項目を立てている)。 今さらながらに、読み返して…

250周年

プロイセンの王立陶磁器工場 (KPM) も、今年、250周年を迎える。1763年は、そういう時代だったのである。

ジャン・パウル生誕250年

読ませるためには、このくらい宣伝しなければだめなのだ、きっと。ドイツの組織的な文化(文学)活動には、まだまだ学ぶべきところがある。 http://www.jean-paul-2013.de/jubilaeum/pressespiegel.html http://www.jean-paul-2013.de/jubilaeum/hoerfunk-un…

die folgende Geschichte

Cees Nooteboom, 1991 春に途中まで読んでそのままになっていた小説。途中から読み始めたものの、なんだか調子が掴めず、結局、最初に戻ることにした。アムステルダムのホテルで寝た主人公は、ポルトガルの部屋で目を覚ますという話。またもや夢とも現ともつ…

妄想

松浦寿輝氏の文芸時評(25日付け朝日新聞朝刊)に、筒井康隆『一族散らし語り』とともに、『創作の極意と掟』が取り上げられていた。妄想を徹底的に書き抜くこと。官能小説に書かれているものは、肉体ではなく、妄想なのかもしれない。

SF宝島

ぜーんぶ!新作読み切り、ということで買ってみた。 近年の科学技術の急激な発展、人間生活への直接の影響が、このジャンルの新展開を支えている。 もう一冊、オール讀物10月号の特集は「官能的」。こちらは、素材そのものにあまり進歩が期待できないだけ…

2666

冒頭の物語には、批評家たちがブレーメンをぶらつくシーンがあって、そこでは、ブレーメンの音楽隊も言及されている。フリースの小説で、『ブレーメンの音楽隊』はライトモチーフに格上げされるが、それは、「死よりもよいものは・・・」という一節を、(おそら…

MRR

18日(水)に亡くなった。93歳だったという。