<誠実>と<ほんもの>

近代自我の確立と崩壊- ライオネル・トリリング著

原著は、1971年。野島秀勝訳が、76年に筑摩書房から出ている。数年前に読んで、コピーまでとったはずだが、あの時なにを読んでいたのか。今、再読して、ようやく何が問題なのかが判ってきた。

"sincerity" が意味を持つのは、個人が、慣習、制度から解放された時点であって、イギリスでは、17世紀ということになるらしい。しかし、個人と言えるような首尾一貫した「私」があり得るのか。"Authenticity" はむしろ、懐疑の産物なのだ。