草迷宮

泉鏡花

漢字の多い文章であるが、よくよく見てみれば、文語と口語が混在している。語り手から語り手へ物語は語り継がれる。修行中の法師は、一人真実を知ることとなるという意味では主役であるが、もっぱら聞き役であり、迷宮世界ではあくまでよそ者なのだ。真の主役であるべき明は、肝心なところで眠り込んだまま、夢を見ている。

岩波文庫の解説は、種村季弘。この二人は、ドッペルゲンガーだという。なるほど。