Über das Grauen I

Walter Benjamin の断章。

深い沈潜(瞑想、集中)からの覚醒時に、恐ろしい幻影が生じることがある。女性(母親)の像でることが多いのだ、と。

深く沈潜していていながら、精神がもっとも活発に活動しているのは、祈りのとき。しかし、神や自己に完全に沈潜している人に、幽霊は現れない。自分以外のモノ(Fremdes)に、中途半端に沈潜している状態が危ない。魂が「渦」を作っていて、身体(Leib)の各部から「精神的なモメント」がそこへ引き込まれていき、精神の空白(Abwesenheit des Geistes)が生じる。身体的なモノと精神的なモノの距離感が欠如したまま肉体(Körper)だけが残される。肉体に境目(keine bestimmte Grenze)がなくなる。「視覚に認知されたモノが肉体に入り込んでくる。自分ではない肉体から精神=身体が渦の中へ落ちていく。知覚されたモノは、恐ろしさの視覚的認知として残る」のだが、その「となり」には、「それは他者を見ているおまえだ」という感覚がある一方で、「それはおまえの分身だ」という感覚が生じる。

 

相似は、まさに二重性が優勢になったときに、起こりがちなことである。人間は、あまりに驚愕すると、恐れをいたいたものを模倣してしまうものだ。(GS. VI, 76)

 

編集者の註によれば、執筆は、1920年から22年頃だという。