地下へ サイゴンの老人

日野啓三

新聞記者だった作者が、小説という形式でしか書くことができないと考えた現実とは何だったのか。

ベトナム報道』は、ノンフィクションでありながら、現実の厚みに歯が立たない記者の姿を通して、現実の「向こう」がフィクション以上に生々しく描き込まれていたように思う。

作者の巻末エセ-によると、ノサックの『見えない法廷』を読んでいたらしい。