バビロンの流れのほとりにて

森有正

1冊150円の古本棚でも、この本は静かに輝いていた。いなかの本屋さんで手にとったのは、この背中に惹かれてのことだったのかもしれない。装丁は栃折久美子。初版19刷(昭和55年刊)。そんなに売れたのか。

これは美が、人間の内面とは関係なしに、それ自体で結晶したものだ。 

 ピザの斜塔がそんな塔なのか、といえば、おそらく違う。幻想のヨーロッパ文明。にもかかわらず先を読まずにはいられないのは、文体の力なのだ、と今にして思う。