ペンギン・ハイウェイ
森見 登美彦
異邦人のお姉さん+少年と父親の組み合わせならば、ごく普通の物語。ところが、この小説には、お母さんと妹が登場する。少年の家族への帰属がはっきりしていれば、お姉さんの存在がいよいよ正体不明になるはず。だが、お姉さんの存在感が圧倒的で、家族の方が正体不明になっている。
罪・苦痛・希望・及び真実の道についての考察
中島敦『全集 2』所収。カフカのアフォリズから10編が訳されている。。
解題によれば、1933年の英訳本からの翻訳。成立年代は不明。カフカの日本初訳は、1940年の本野亨一訳『審判』である、とのこと。42年に、中島が病死していることを考え合わせると、いずれにしても先駆的な仕事だった。
そういえば、わたし自身、カフカの名前を知ったのは、中島敦を通してだったかもしれない。ドイツの小説家で、同じように変身の物語を書いた人がいる、と、中学の国語の先生が言っていた。
しかし、今読み直してみて、なんとなくカフカを感じるのは、隴西の李徴ではなく、匈奴で生き延びた李陵である。
断片10は
知識発生の最初の徴候は、死に対する要求である。・・・
という一文で、始まり、
・・・信仰の痕跡がある。
と、結ばれている。