2022-07-01から1ヶ月間の記事一覧

ロリータ

ナボコフ(若島正 訳) 舌の先が口蓋を三歩下がって、三歩目にそっと歯を叩く。ロ。リー。タ。 この呪文のような言葉で、想像の世界が切り拓かれる。ハンバートにとっては、牢獄のような妄想だが、作者と何人かの幸福な読者にとっては、現実からの解放にもな…

フェルメールに敬礼

『窓辺で手紙を読む女』を観た。窓から差し込んでいる光が眩しい。ガラスに女の顔が写っている。窓の縁は青色。デルフトにそんな家があったような気がしてきた。キューピットはなくもながであったが、これだけ色鮮やかにみえるのは、修復のおかげか、気のせ…

テヘランでロリータを読む

アザール・ナフィーシー(市川恵里 訳)河出文庫ナボコフを読むことにどんな意味があるのか。イスラム革命まっただなかで、なぜこの女性たちは『ロリータ』を読むのか。ハンバートの滑稽な物語に隠された残忍さが、テヘランの状況とパラレルになっているから…

Claudio Monteverdi: Vespro della Beata Vergine

Collegium Vocale Gent / Philippe Herreweghe Sancta Maria, ora pro nobis が繰り返されているだけなのだが、聴いているうちに、楽器も同じように歌っているような気がしてくる。いや。たしかに、そう歌っている。

乗代雄介 最高の任務

自分を書くことで自分に書かれる、自分が誰かわからない者だけが、筆のすべりに露出した何かに目をとめ、自分を突き動かしている切実なものに気付くのだ。 自分のことを書かなくても、そうなる。