2023-01-01から1ヶ月間の記事一覧

黒蜥蜴

無二の好敵手を失ったさびしさか、それとも何かもっと別の理由があったのか、女賊はいとも不思議な悲しみに、うちひしがれていた。 心理描写が稚拙なのは、乱歩個人の問題なのか。あるいは、推理小説というジャンルの制約なのか。 その一方で、変装がテーマ…

少年探偵団

明智小五郎事件簿 X そいつは全身、墨をぬったような、おそろしくまっ黒なやつだということでした。「黒い魔物」のうわさは、もう、東京中にひろがっていましたけれど、ふしぎにも、はっきり、そいつの正体をみきわめた人は、だれもありませんでした。 そい…

『怪人二十面相』

明智小五郎事件簿 IXこの小説で、少年探偵団が結成される。 (...) きみのはたらきのことを、学校でみんなに話したら、ぼくと同じ考えのものが十人もあつまっちゃったんです。 それでみんなで、少年探偵団っていう会をつくっているんです。むろん学校の勉強や…

蜘蛛男

明智小五郎事件簿 III人魚になった死体。銀幕から滴る血。読むにしたがって、次に何が起こるのかがうっすらと意識に上ってくる。異様な読書体験だった。明智くんのような明晰な推理ができるからではない。おそらく、小学生の頃、読んだことがあるのだ。読ん…

一寸法師/何者

明智小五郎事件簿 II(集英社文庫)には、この二つの作品が収録されている。編集方針としては、事件発生順にならべるということらしい。巻末の年代記によると、一寸法師事件も何者事件も、1925年あたりに起こったとされる。しかし、作品発表年は、『一寸法師…

Bad Maulbronn

カッツェンベルガー博士は、かれの論文を批判したシュトリックを殴るため、娘の手オーダは、憧れの詩人トイドバハの朗読を聴くために、マウルボルン温泉に出かけるのだった。 2019年、マウルブロン修道院に出かけたとき、博士の旅のことはすっかり忘れていた…

丸山眞男の敗北

伊東祐吏 2016(講談社選書メチエ)これも後半「開国」のあたりから、話しが面白くなる。外来のものを受け入れる「古層」があるはずだが、それは「層」というほどの実体ではない。それを表すために、丸山は音楽用語を借用し、「執拗低音(バッソ・オスティナ…

わたしが先生の「ロリータ」だったころ

愛に見せかけた支配についてアリソン・ウッド(服部理佳 訳) 物語前半はポルノ小説。途中で放り出したのだが、年末のお勧めブックリストに挙がっているのをみて、またぞろ引っ張り出したのだった。最後の数十ページ、第三部がおもしろい。ノンフィクション…

die große Jean-Paul-Ausgabe bei Hanser

ジャンパウル全集 6巻本今は、全10巻になっている全集だが、学生にとってはちょっとした買い物だったはずである。「研究するつもりなら、これを買え」と助言してくれる先輩がいたのだ。当時の大学には。 6冊のうち、一番使い込んでいるのは、晩年のテクスト…

クリスマスツリーの処分

ハイデルベルク市からメールが届いた。旧市街は、1月10日に回収する。6時までに、公道の脇に置いておくこと。飾りは完全にはずさなければならない。2.5メートルまで。なお、キルヒハイム、ヴィープリンゲンのリサイクリング農場でも引き渡しできる(無料)月…