医学 薬学 化学領域の 独英和活用大辞典

河辺実 編
医学書を読むとなると、役に立つ。"vegatativ" というのは、植物性ではなく、自律神経なのだった。

上本町の古本屋さんで随分前に買った辞書。値引きに継ぐ、値引きということか、14500円、4000円、3500円と売値が書き換えられている。あの店も、いつの間にか、なくなっていた。

横浜線ドッペルゲンガー

玉木ヴァネッサ千尋
研究紹介コーナーにポスターを出してみたら、思わぬ収穫。ドッペルゲンガーの話なら、ヤングマガジンに連載中だとか。
場面は、主に、ドッペルゲンガーの視点から描かれている。かれは、主人公の死霊であり、(ひょっとすると変わるかもしれない)主人公の運命を知っている。その意味では、半ば全知の語り手とみなすこともできるかもしれない。しかし、ドッペルゲンガーが直接関与しない場面もある。
ところで、ドッペルゲンガーを視たら死ぬという伝承は、日本でも広く受け入れらているらしい。鹿児島から来た人も、三重県の人も知っていた。

ペンギン・ハイウェイ

森見 登美彦
異邦人のお姉さん+少年と父親の組み合わせならば、ごく普通の物語。ところが、この小説には、お母さんと妹が登場する。少年の家族への帰属がはっきりしていれば、お姉さんの存在がいよいよ正体不明になるはず。だが、お姉さんの存在感が圧倒的で、家族の方が正体不明になっている。

罪・苦痛・希望・及び真実の道についての考察

中島敦『全集 2』所収。カフカのアフォリズから10編が訳されている。。
解題によれば、1933年の英訳本からの翻訳。成立年代は不明。カフカの日本初訳は、1940年の本野亨一訳『審判』である、とのこと。42年に、中島が病死していることを考え合わせると、いずれにしても先駆的な仕事だった。
そういえば、わたし自身、カフカの名前を知ったのは、中島敦を通してだったかもしれない。ドイツの小説家で、同じように変身の物語を書いた人がいる、と、中学の国語の先生が言っていた。
しかし、今読み直してみて、なんとなくカフカを感じるのは、隴西の李徴ではなく、匈奴で生き延びた李陵である。

断片10は

知識発生の最初の徴候は、死に対する要求である。・・・

という一文で、始まり、

・・・信仰の痕跡がある。

と、結ばれている。

鐘の渡り

古井由吉

「窓の内」「方違え」「机の四隅」が、よかった。

奇妙なイメージが日常の中に浮かび上がってくる様がおもしろい。

「机の四隅」はドッペルゲンガーの話。「影の病」というのは、ドイツ語かと思ったら、歴とした日本語なのだった。

書庫を建てる

松原隆一郎 堀部安嗣 著
8坪の土地に建てられたコンクリートの塊。その中に、1万冊の書物を収める書架と、さらに、書斎、寝室、シャワールームを設えたという、うらやましい話。
しかし、この本がただの自慢話で終わらないのは、祖父の記憶というモチーフが絡んでいるためである。この書庫には、170センチもあるという仏壇も収められることになる。書籍は、死者たち(あるいは、やがては死に逝く者たち)の記録。書庫の持ち主にとっては、仏壇と書籍が相並んで、特に齟齬がないようなのだ。
それは、書籍が死者に近いというよりも、仏壇の方が生きているためなのかもしれない。