ノーチラス号

海底を旅する潜水艦には、図書館があって、12000冊の書籍を所蔵している。様々な言語で書かれた蔵書は、自然科学、倫理学、文学に関するものであり、政治経済の書籍は一冊もない。そのとなりのサロンにも、貴重な収集品が博物館のように並べられている。天上は、アラベスク模様で飾られ、オルガンの上には、ウェーバー、ロッシーニモーツァルトにならんで、ワグナーの楽譜が置かれている。

ネモ船長の旅は、無辺の海底探査であると同時に、地上世界からの逃避である。

しかしまた、この潜水艦は、通商による世界拡大とパラレルに、市民社会が個人的な空間へ閉ざされていく過程を象徴している。