たそかれの萩の葉風にこの比(ごろ)のとはぬならひをうち忘れつゝ

式子内親王
夕闇に沈む頃、萩の葉が風でさわさわと鳴るのを耳にして、瞬間、恋人が来たのかと錯覚した。やんごとなき姫君ならば、いかにもありそうなできごとではある。
しかし、恋人のことを思い出した、ではなく、恋人が来なくなっていたことを忘れた、と詠うところがナミではない。